うつ病患者が100万人を超え、この10年間で2・4倍に急増している。不況などの影響はもちろんだが、新規抗うつ薬の登場との関係を指摘する声も強い。安易な診断や処方を見直す動きも出つつある。
東京の大手事務機器メーカーでは、約1万2000人いる従業員中、心の病による年間の休職者が70人(0・6%)を超える。2か月以上の長期休職者も30人を超えた。多くがうつ病との診断で、10年前までは年間数人だったのが、2000年を境に急増した。
読売新聞 2010年1月5日
うつ病患者が100万人を超え、この10年間で2・4倍に急増しているそうだ。その原因として記事では、不況などの経済的要因の他に、新薬SSRIの登場とうつ病の啓発キャンペーンによって、安易にうつ病だと思い込む人が増えたことを指摘している。
「うつ百万人陰に新薬?販売高と患者数比例」と題したその記事では、まるで新薬の登場によりうつ病の患者数が増加したかのような論旨であり、その根拠として新薬の「販売高」と「患者数」が比例していることを挙げている。
しかし、単純に考えて、患者数が倍になれば、必要とされる薬の量も倍になるわけだから、販売高と患者数の間に因果関係(比例関係)があることは何の不思議もないし、なおかつ、因果関係としては患者数が原因であって販売高は結果となる。つまり、この記事の推測の逆だ。
ちなみに、記事が指摘するとおり、うつ病患者数の増加は10年前と比べて気軽に病院にかかり診察を受けることができるようになったことが大きいだろう。しかし、これは少しも危惧すべきことではなく、むしろ歓迎すべきことではないだろうか?なにしろ、以前は、そしてもしかすると今も、うつ病は心の病であり大っぴらにできるものではないという雰囲気が確実にあり、本当にうつでも病院へ行く人は少なかったのだから。
それを示すのがこころの病の受診率に関する各国比較のデータである。

メンタルヘルス国際比較(WHO 2002年-05年)
【出典】図録▽メンタルヘルスの国際比較
一番上のグラフを見ると、日本では心の病の有病率が低い。これは、日本人が心の病に罹りにくいというよりは、病院へ行かないため、病としての認定を受けないだけなのではないだろうか?
そして一番下のグラフを見ると、欧米では受診率が5割近いのに、日本では2割にも満たない。つまり、うつ病に罹患していても病院へ行かないケースが圧倒的に多いということだ。
そうした意味で、昔よりも病院へ行って診察を受けやすくなったということは歓迎すべきことなのだ。但し、もちろん、うつでもないのにうつと診断されることは問題だから、病院の側で患者をうつ病であるか、そうでないかをきっちりと正しく診断し、的確な治療ができるような体制を整えてもらう必要はもちろんある。
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